2014年7月11日金曜日

かみなりちゃんの世界を加古さんがご案内します。―加古里子さんのエッセー再録

『だるまちゃんとかみなりちゃん』は、月刊絵本「こどものとも」で1968年8月号に刊行された作品です。毎月「こどものとも」には、作者のことばを掲載した折り込み付録がついています。当時の折り込み付録に掲載された、加古里子さんのエッセーの一部を再録します。どうぞ、お楽しみください。 


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(1968年8月号こどものとも折り込み付録より一部抜粋)

かみなりちゃんと未来社会 


さて、以上のような自然天候現象としての「雷電」と、伝承説話が生みだした「雷神」のイメージの上にたって、「だるまちゃん」の相手にふさわしい「かみなりちゃん」の創出が私の宿題となりました。 
 そこで「だるまちゃん」を現在の日本の子どもの代表とし、「かみなりちゃん」に遠い国-すなわち未来性と外国のイメージをもたせ、古くから伝わった雷の姿の未来形で表現しようとしてできたのがこの絵本です。その中に出てくる未知な未来都市にお迷いになるといけませんから、ちょっと観光をかねてご案内することといたします。 
 第10場面(p.20-21)におこしください。正面中央遠くにみえるのが指向性をもった放電塔です。ここからすべての動力源がかみなりの国すみずみに供給されています。それを受けて、すべての建物や照明や時計器械などが作動するシステムをとっています。そういえばラジオアンテナと見えた雲車(これをウンカーと命名いたしましょう)の細い柱は、受電ポールであったことにお気づきでございましょうか? 
 大きな放電のため、あたりはイオン化され、地上の色彩にくらべ、あたかもカラーテレビの色のようにけいこうめいた色彩が、ここでは基本色となっています。 
 この放電光と走りさる軌道車=雷車(ライカーと呼びましょう)の超音速音が、雲間をもれて時おりみなさまに達することもあるかと存じます。 
 そういえば、第9場面(p.18-19)にみられるように、いつも裸でいることや、とら皮の衣類は昔のこと、発達したいまのかみなりの国では、柄や色彩にその伝統がみうけられますが、合成化学品の衣類が広くゆきわたっているようです。 
 ご専門の方がおられると恐縮ですが、プール底の接着工法や強弾性浮袋と考え合わせ、高度の化学工業水準にあるものと考えられます。また第9場面(p.18-19)の振動上昇装置や、第5場面(p.11)のにじが、テレビ画像の遠隔撮影光として第12場面(p.24-25)に映出されたり、きわめて小型の無線電話装置や配膳移送機などからも、電子工業、電動機械もなかなかすぐれて発達しているとみうけられます。 
 このように進歩した生活と社会でありながら、カミナリ形ともいうべき二つの突起を各種の形象化にやたらに使いたがることと、第11場面にみられるように、かつて衣服をつけなかった裸の「黄銅時代」を忘れまいとしてか、記念像をたてている態度に、深く考えさせられるものがありました。特にロダン作のこの像は、別に「目ざめる人」と題されていたことを申しそえてご案内をおわります。 

―――暗き、暗き、曠野にも似たる 
   わが頭脳の中に 
   時として、電のほとばしる如く、 
   革命の思想はひらめけども 

   あはれ、あはれ、 
   かの壮快なる雷鳴は遂に聞え 
   来らず―――。        石川啄木「呼子と口笛」  


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