加古さんは東京大学工学部卒業後、民間企業の研究所に勤務しながら、セツルメント(*注)での活動を通して、子どもたちが遊ぶ姿を目の当たりにしながら、紙芝居や幻灯を作って発表していました。
子どもたちの喜ぶ作品の参考になればと、仕事の合間をぬって敗戦後GHQの建てたCIE図書館(*)で外国の絵本の棚を見ているうち、ソ連の絵本にひかれていき、ソ連時代の子供向けの月刊「絵本雑誌」を1950年くらいから定期購読するようになりました。
そのバラエティーの豊かさとおもしろさに感銘を受け、その内容を紙芝居に活かして子どもたちに披露したこともあったそうです。
そんな中で、目についたのが「マトリョーシカちゃん」という絵本でした。ソ連の郷土玩具が一堂に会して展開していくお話を読んで、日本の玩具でもこれをできないだろうかと思いついたのが、だるまちゃんが誕生するきっかけでした。
当時の日本の絵本は、敗戦での国家主義への反省の影響からか、日本的なものを出さず無国籍な雰囲気の絵本が多かったそうです。自国の特徴を郷土玩具で描き出せれば、日本の民族性を表現できるのではないかという思いから、郷土玩具を色々考えて「だるまちゃん」という登場人物がうまれたというわけです。
その後、『マトリョーシカちゃん』は原作に忠実なオリジナル絵本として、「こどものとも」で発表され、こちらも子どもたちに長い間読み継がれています。
国は違えど、同じ郷土玩具同士。「だるまちゃん」と「マトリョーシカちゃん」は実は親戚のような関係なのかもしれませんね。
*セツルメント:都市の貧困地区に、宿泊所、託児所などの設備を設け、住民の生活向上のための助力をする社会事業およびその施設。
*終戦後、GHQが日本の主要都市に設置した図書館。
★『マトリョーシカちゃん』について
http://www.fukuinkan.co.jp/bookdetail.php?goods_id=234
★福音館書店 みんなの人気者だるまちゃん
http://www.fukuinkan.co.jp/ninkimono/daruma/index.html